【閑話休題】「らんまん」の石版印刷!
- #印刷
先週金曜日のNHK朝ドラ「らんまん」では、万太郎が通う印刷屋で石版印刷について説明されましたね! 頑固な絵師、岩下さんに認められて、万太郎はついに石版で植物画を刷りました。ドラマを見ていて「お! これは、現在のオフセット印刷の原理と同じだ!」とうれしくなった私です。
ドラマでの詳しい描写はこちらで紹介されています。クランクイン
リトグラフと同じ原理
石版印刷は、油を良く吸収する性質と水分を良く吸収・保持する性質を備えた石灰石の一種で作られた板の上に、油を含んだ墨で絵柄を描き、その板にアラビアゴム液を塗ると、絵柄が描かれた部分は油性、その他の部分は水性の版となり、この版に油性のインキを塗れば、水性の部分はインキをはじき、絵柄が描かれた部分のみにインキが付着。それを紙に転写するしくみです。
リトグラフも同じ原理です。版を彫って凸凹をつけるわけではないので「平版印刷」と呼ばれます。現在の印刷方式はほぼほぼこの「平版印刷」。一般的には「オフセット印刷」と呼ばれる方式で印刷がおこなわれています。
では、石版印刷と、オフセット印刷を図解してみましょう。
一度「転写(オフセット)」するから「オフセット印刷」
現在は、インクを塗った版胴から一度「ブランケット」に転写(オフセット)して、紙に写すので「オフセット印刷」と呼ばれています。
石の板ではなく、PS版と呼ばれるアルミで作られた板を感光し、水分を含むことができる部分と、絵柄の部分とに分けます。石版印刷のように墨で絵柄を描くのではなく、DTPデータを網点に変換して、絵柄を版上に再現します。網点の配置や数、大きさを調整することで、色鮮やかで高品質な印刷が可能となっています。印刷物をルーペで見ると、カラー印刷の場合は、C(青)、M(赤)、Y(黄)、K(黒)の細かなドットが見えますよ。それが網点です。
江戸時代は、版木を彫る凸版印刷が主流だった日本も明治時代に平版印刷が登場し、ドラマの中でも「新しいことに挑戦したんだ」と奥田瑛二さん(印刷屋の親方)が言っていましたね。ヨーロッパでは、1798年、アロイス・ゼネフェルダーがリトグラフを発明し、ロートレックなどの画家が斬新で芸術性の高いポスターをこの方法で描いたそうです。そのころの日本は、伊能忠敬が蝦夷地を測量していた時代です。十返舎一九の『東海道中膝栗毛』も出版されたそうですが、版木を掘る凸版印刷だったのでしょうね。
まっすぐな万太郎が魅力的な「らんまん」。印刷屋で修行をして、植物学雑誌の発行にこぎつけてほしいです。