第12回 記事の基本「5W1H」
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大切な6つの要素
作文の授業でも習いましたが、記事を書くときは「5W1H」を入れるのが基本と言われています。それは、「When(いつ)」「Where(どこで)」「Who(だれが)」「What(なにを)」「Why(なぜ)」「How(どのように)」の英単語の頭文字をとった言葉で、記事に限らず、ビジネスで相手に伝えるときにも意識すべき事柄ですよね。原稿を書くときは最低この6点が押さえられていることを確認します。
私はまず「5W1H」を箇条書きにして、文章の中で伝えたいポイントを上げます。何から書くかは、報道記事なら「いつ」「どこで」「何が」起こったかから書きますが、読者の興味を惹きたかったら、どんな言葉で記事に関心を持ってもらうかを決めます。「〜をご存知ですか?」と疑問から入ることもあります。
記事は、書き上げたときはまだ取材の余韻が残っていて興奮しているし、結構ひとりよがりになっています。取材が楽しくて、気持ちに勢いがあるときはなおさらです。湧き出る言葉を書き連ねただけで、相手にもその興奮が伝わる気になっているのです。大きな編集部では「デスク」という人がいて、紙面全体でのその記事の位置付けや、記事の内容などをジャッジしてバッサバッサと赤字を入れてくれますが、小さい事務所でしたら、自分でジャッジする必要があります。「ひとり記者ひとりデスク」です。
私は急ぎでなければ(週刊紙じゃなくなってからは、その日のうちに脱稿なんてしない)、書いた原稿を一晩寝かせます。翌日すっきりした頭で原稿を読むと冷静になって、筆が走りすぎているところ、感動しすぎて同じことを何回も繰り返しているところ、説明不足なところなどがわかりますし、肝心の「5W1H」が抜けていることがあったりもします。
自分から離れて確認する
幽体離脱(?)して他人になった気持ちで原稿を読み直すこともします。「この文章で読者は何を受け取るだろう?」と想像するのです。けれども、どうがんばったって他人になることはできません。すでに取材で受けた印象があり、先入観なしでは読めないのです。なので、一度は他の人に目を通してもらいます。自分では気付かなかったことを指摘されて、助かることが多いです。
駆け出しの頃は、主に本多勝一さん(元朝日新聞編集委員)の本を読んで、記事を書き方を勉強しました。『日本語の作文技術』『実戦・日本語の作文技術』(朝日文庫)などです 。本多さんは、「事実」を厳密に扱う姿勢が日本のノンフィクション界に大きな影響を与えたと言われています。探検家でノンフィクション作家の角幡唯介さんも「探検や冒険を考える上で本多さんの著書は避けて通れない」とおっしゃっています(私は探検ものは書けませんが)。角幡さんは、「専門家が文章力を持つと、こんなに臨場感が伝わるのか」と思う作家さんの1人です。分子生物学者の福岡伸一さんもそうですね。こういう方の本を読んで文章力を学んだりもします。文豪が書いた「文章読本」などもおすすめです。
余談ですが、角幡唯介さん、長年の夢だったカナダ・エルズミアへ「エスキモー流の完全狩猟依存型旅行」をするというのを先月実現されて、トークショーでサインをいただいた程度のファンの私も心躍るものがありました。エルズミアへの旅が書籍化されるのを心待ちにしています。