第6回「好奇心」を大切に
- #編集
事実の中から「なぜ?」を見つける
私の編集作業の出発はいつも「どうして?」です。小説を読むと「この作家はどうしてこの物語を書こうと思ったのだろうか」と思うし、スポーツで成果を上げる選手には「何がきっかけでこのスポーツに取り組みようになったのだろう? そして、どうしてここまで頑張れるのだろう?」と思います(自分が飽きっぽいからか持続できていることをとても尊敬します)。企業を取材するときも「どうして起業されたのか、どうしてここまで続けて来れたのか?」ということを考えます。社長さんの幼いときの経験が出発点だったり、「同志」と呼べる仲間がいたからであったり、はたまた身内に資産家がいて出資してくれたりなど、その「根拠」が納得できれば、面白い記事を書くことができます。自分にはない感性や経験に触れることができるのも編集の仕事の醍醐味ですね。「好奇心」が結構大事です。
なので、企画を立てるときは、まず対象を徹底的に深掘りし、事実を明らかにしていくこと。そしてそこから生まれる「なぜ」を明らかにしていくことに努めます。その上で、読者の方に対する「これだけは伝えたい」「ここを理解してほしい」というポイントを明確にします。そのポイントを箇条書きにして、流れを考えます。
まずは見出しを考える
「大見出し」「中見出し」「小見出し」だけを読めば内容がわかるというのが基本と教えられました。まず「大見出し」で企画全体を表現します。そして、「中見出し」「小見出し」でポイントを列挙していきます。ただ、読者に興味を持ってもらうために、内容はわからないけど、どんな内容か知りたくなるような見出しをつけることもあります。この見出しを考える作業を行うことで、自分の「伝えたいこと」の輪郭が明らかになっていきます。「見出し=伝えたいポイント」の言葉や順番を考えに考えてから本文記述に入ります。
それらの作業はWEBでも動画でも同じです。アニメーションでeラーニングの教材を作っていた時期がありました。まずは「『勉強しよう』と思ってもらうにはどうしたらいいだろう?」と考えました。「立板に水」のように理屈を並べても内容は右から左に流れていくだけです。そこで、まず「どうして勉強しなければいけないか」がわかり、「勉強してみよう」という気持ちになってもらうこと、「自分にも関係あるかもしれない」「え、どうしたらいいの?」と、ユーザーの「好奇心」をかきたてることに重点を置きました。
「自分のこと」として考えてもらえるように
たとえば、漫画で始める。「こんな出来事があったよ(たとえば、取引先の会社の役員が逮捕される!)」「どうしてだろう?(インサイダー取引をしたらしい)」「インサイダー取引って何?」「もしかしたら、私もいつのまにかやってしまうかもしれない?」「逮捕されないようにするにはどうしたらいい?」という漫画です。「自分のこと」になると、皆興味を持つからです。
逆に「こんなこと、あなたには関係ないですよね?」「私には関係ないって思っていませんか?」と話し始めることもあります。ユーザーの「関係ないよね」「だから勉強しなくてもいい」という気持ちにまずは共感するのです。「うん、関係ないよ」という気持ちになってもらったところで、「実は関係あるんですよ」「それは、かくかくしかじかだからです」と話す。「え、そうなの?」「嘘でしょ?!」という気持ちが「詳しく知りたい」という気持ちにつながるからです。
テレビドラマを参考にすることもあります。視聴率の高いドラマには理由があるからです。ネットでの講評は賛否両論ですけどね。でもやっぱり、「脚本」が命だと思うのです。ドラマを観ながら「こういう展開の仕方もあるんだ!」と思うこと、しばしばです。今年の秋ドラマ、皆さんはどれが1番面白かったですか? 私は「コタツがない家」でした。あの小気味いい家族の会話に笑わされました。「きのう何食べた?」も良かったですね〜。こういう人の心の琴線に触れる言葉を紡ぎ出せたらな〜といつも思います。(ライターは作家ではありませんが)
来年からの冬ドラマにも期待してます。今年のブログも今回が最後です。お付き合いくださいまして、ありがとうございました。皆さまもよいお年をお迎えください!
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