第8回 企画の意図を明確に
- #編集
たくさん勉強する
10調べたことが10記事になるわけではないことは以前も述べましたが、1つの記事を作るのに、その10倍くらいの勉強が必要だなというのが実感です。ずい分古い話になりますが、雇用機会均等法が決まろうとしていたとき、その法律についての企画を組むことになりました。「なぜ今雇用機会均等法なのか」「どういう法律なのか」「なぜ制定が必要なのか」…一冊の本にできるほどの企画です。それを限られた紙面で伝えなくてはいけません(たしか連載企画だった)。誰に何を語ってもらえば理解していただけるのか、どういう解説記事がいいのかなどなど、編集部では皆が出した企画をたたき台にしてさんざん議論しました。
法律家の解説や働いているお母さんの新法に期待する言葉などを入れながら、私は、「女性が男並みに働くのではなく、母性保護をしながら働き続けることの大切さ」を理解してもらうために、産婦人科の医師に「母性保護の大切さ」についての一問一答を書いていただくことにしました。しかし、医師はとても忙しく、電話も夜12時ごろにしかつながりません(まだメールというものがなかった時代)。普段の産婦人科のお仕事をしながらの原稿執筆依頼ですから仕方ありません。依頼をするためにその先生の本や、医学関係の本をたくさん読み、記事のポイントをまとめておいたのですが、電話がやっとつながったと思ったら、先生は企画書を見て「君が下書きしなさい」とおっしゃるのです。「時間がないので君が書いた記事に赤字を入れる形にしてほしい」というのです。
さて、、、、、とんでもない宿題を出された私は医学関係の本を読んで読んで、それを噛み砕いて、一問一答を書きました。何度かFAXをやりとりして先生からOKをいただいたときは卒論を書き上げたときような疲れが出たのを覚えています。(もちろん達成感もありました)
コミュニケーションが大事
これはなんとか合格点をいただけたエピソードですが、毎月1回の健康についての連載企画では、記事を書いてくださる先生に「編集部の企画意図が見えないね」と突き放されたことがあります。「専門家の先生だから、いつどのような『健康』に関する記事を書けばいいかわかっていらっしゃるだろう」という甘えがあったのです。先生からは、「編集部がどういうふうにこのコーナーを展開したいのかわからない」と言われました。
それで、またまた医学の勉強をして連載企画のプランをまとめたのですが、先生に「これは小児科だね。私は内科だから専門じゃない」と言われ、「医療分野って難しいな〜」「執筆してくださる方とのコミュニケーションが大事だな」とつくづく感じました。「文化部」という広いジャンルを網羅する部署だったので、映画、演劇、音楽(クラシックからPOPSまで)、暮らし・家庭、医学etc. 守備範囲が広すぎて、毎日が勉強の日々でしたが、知らないことを学べるというのは楽しくて、それが編集の仕事を続けられる原動力ですね。
以前は書籍を購入しないと勉強できなかったことが、今ではWEBで検索すればある程度の基礎知識は得られます(もちろん、情報の信憑性を確認した上で)。書籍購入費用も減ったし、便利な世の中になりましたよね。すでに知っているからと勉強をおろそかにしないで、いつも「1から勉強しよう」という姿勢でいることが大事な気がします。
この記事に対するご意見・ご感想・ご質問等ありましたら、
ぜひ下記フォームにてお送りください。