「ルビ」は「ふりがな」
「ルビ（ruby）」というのは、文字の上（横書きのとき）や右側（縦書きのとき）に、ふりがなや異なる読み方として付属される小さな文字のこと。印刷や編集用語としては「ルビ」と呼びますが、一般には「ふりがな」と呼ぶことが多いですね。この「ルビ」ってなかなか悩ましい存在で、私も長年「どう振るのが正解なのか？」と迷ってきました。

「ルビ」についてなぜ悩むのか
(1)どの漢字に振るべきか。新聞では常用漢字しか使わないので、それ以外の漢字には振りますが、新聞ではない発行物では、どの漢字に振るのかを決めます。
(2)「肩付き」なのか「中付き」なのか。「肩付き」というのは、文字の先頭に合わせてルビを置くことで、「中付き」というのは、文字全体の中央にルビを置くことです。
(3)拗促音（小さい「ょ」とか「っ」など）は、使うか。発行物によっては「しゅう」というふりがなを全音の「しゆう」と振るというルールもあります。
(4)モノルビ（一字ずつ振る）か、グループルビ（単語に対して振る）か
(5)元の文字よりルビが短いときは、均等に振るのか、真ん中にギュッと詰めるのか。文字より長くなる場合の処理はどうするか。

いろいろ悩むんですよ。

ミステリーや翻訳などでは、たとえば「私道」という文字に「ドライブウエイ」とルビを振るなど、本文とルビとが一緒になってその物語の雰囲気を醸し出す場合もあります。

また、読者の年齢層によってルビの振り方が変わるそうです。たとえば児童書だと、ある学年以上で習う漢字のみルビを振るとか…。とすると、各学年で習う漢字も頭に入れておかなくてはいけないってことですね？！（大変！）

編集者判断でいい？
私が今編集を担当している情報誌では、著者の方がいらっしゃるときはその方におまかせしますし、「人名にはすべてルビを振る」「読みにくい漢字にはルビを振る」「中付き」という程度のルールしかありませんが、それでも、「この文字には振るべきか？」と悩むことも多く、「ルビってみんなどういう基準で振っているんだろう？」といつも思っていました。すると、月刊誌「本の雑誌」の2024年7月号で「特集：あなたはルビを振りますか？」が組まれたのを知り、早速読んでみました。

「本の雑誌」の編集者座談会や組版の方のお話はおもしろくて、目からウロコ。「ルビの振り方にルールがあるのか？」に対して「最終的には編集者判断」という一行に「！！！」、一安心しました。

「ルビの財団」がある！
「本の雑誌」を読んでいると「ルビ財団」という広告を見つけました。「一般社団法人」だそうです。
→ルビ財団（https://rubizaidan.jp/）

ルビ財団のホームページでは漢字すべてにルビが振られ（右下のボタンで「ルビ解除」も可能）、「社会にふりがな（ルビ）を適切に増やすことで、あらゆる人が学びやすく、多文化が共生する社会づくりを目指します」と記されています。

またルビ財団は、ウェブサイト上のすべての漢字にルビが付けられるソフトウェア「ルビフルボタン（β版）」を開発していて、一般への無償提供も行っています。

サイトの中ではインタビューやコラムもあり、「ルビ」について深く知ることができます。「お知らせ・記事」というメニューからさまざまなルビについての情報を知ることができますが、中でもベストセラーになった本『嫌われる勇気』を編集された方のインタビューは面白かったです。

ベストセラー『嫌われる勇気』編集者×デザイン思考の第一人者が語る売れる本作りの極意
https://rubyful.rubizaidan.jp/kakiuchi_sasou_202405

「ひらがな」と「漢字」では、使う脳の部位が異なる
『嫌われる勇気』の方のインタビューを読んで思い出したのは、「『漢字』は人の顔や図形などを認識する図像認識対応部位である側頭葉で処理をされ、一方、『かな』は音声認識対応部位である頭頂葉で処理される」ということです（昔、テレビで観た）。つまり「漢字」は絵としてその意味を理解し、「かな」は音声としてその意味を理解するということ。外国人が「漢字が難しい」と言うのは普段と異なる脳を使わなければいけないからだそうですが、「ルビの振られた文章を読む」ということは、脳の中の側頭葉と頭頂葉両方を使って理解するということになるのかな？と思いました。

「ルビ」の世界はなかなか深いですね。