何のために、何を、誰に対して、どのように伝えるのか
「人は『表現』しながら生きている」という言葉を学生時代に学んだことがあるのですが、編集の仕事に長年携わってきて、「人は『編集』しながら生きている」と、つくづく思います。無意識のうちではあっても、何を見て、何を経験し、何を取捨選択して、どのように、誰に伝えるのか、人は毎日考えながら生きていると思うからです。「何も伝えない」ということも「編集」のひとつです。ときどき「編集」に失敗して傷つくこともありますが…。その作業を意識的にできて、自らを客観視でき、エネルギーを持続できる人たちが大成しているような気もします。

仕事の上での「編集」には、「紙媒体の編集」「WEBの編集」「動画の編集」など、さまざまな形がありますね。私自身も元々は紙媒体の編集（新卒で週刊新聞の編集部に就職）ですが、25年くらい前からはWEBの編集が始まり、アニメーションムービーの編集、映像の編集とさまざまな媒体に関わってきました。けれども、どの媒体をとっても根本の「何のために、何を、誰に対して、どのように伝えるのか」というところは同じだと思います。

コンテンツをどう表現するのか
「伝えたい」という気持ちがなくてはいいものは作れません。もちろん、紙媒体は紙媒体なりの、WEBはWEBなりの専門技術が必要ですが、それらの詳細は専門家に任せるとして、編集者としてはそれぞれの技術を理解した上で「コンテンツをどう表現するのか」が出発点です。「ひとりよがり」にならない程度の「熱量」を持って、受け手の状況や気持ちも考えながら編集していく作業は、ときには迷路にはまったりもしますが、なかなかに面白い仕事です。

このシリーズ「編集のはなし」では、私が学んできた「編集のコツ」をお伝えできればと思います。